業界団体および加盟社の女性登用についての要請

日本民間放送連盟 会長    大久保好男 様
日本新聞協会 会長      丸山昌宏 様
日本書籍出版協会 理事長   小野寺優 様
日本雑誌協会 理事長     堀内丸惠 様

2022年3月28日
日本民間放送労働組合連合会
日本新聞労働組合連合
日本出版労働組合連合会
メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)

 貴団体の日ごろの活動に敬意を表します。

 今年の国際女性デーでは、多くのメディアでジェンダー格差の特集が組まれ、様々なイベントが開催されました。その主催者は小・中・高校生や大学生などの若い世代をはじめ、多様な世代・多様な背景の人々で構成されたものも数多く、ジェンダーへの関心の高さ、社会の変化を感じさせてくれました。

 昨年もお伝えしましたように、「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択した2015年の国連サミットの「持続可能な社会を作るには、ジェンダーの視点を計画的に主流化していくことが不可欠だ」という宣言に基づき、世界各国のあらゆる分野で女性の積極的登用が進み、日本国内でも、多くの企業や業界団体で事態の改善が進んでいます。
 
 しかし日本のメディアの業界団体では、役員における女性の割合がゼロや僅少な状態が続いたままです。

 私たちはこの現状に強い危機感を抱き、労働組合においては様々なジェンダー平等実現に向けた取り組みを進めています。メディア業界には「各媒体で女性の数は増えている」「差別はなく実力があれば女性でも管理職になれるので対策は必要ない」という声が根強くありますが、この声に加え、不規則な就労、長時間労働に人手不足が常態化したままでは、社会の変化に取り残され、多様な視点からの取材・発信が難しくなるばかりです。このままでは読者・視聴者からの信頼喪失を加速し、政府からの介入を招きかねません。進まない女性登用はメディアにとって死活問題であり、自主、自立のためにも、各団体・企業が自律的に是正策に取り組むよう強く求めます。

 2022年4月1日の改正女性活躍推進法の施行に伴い、同法に基づく行動計画の策定・届出、情報公開の義務化が101人以上300人以下の中小企業にも義務化されます。私たちは、各業界団体の共通課題として、同法の遵守と女性活躍を推進し、業界団体および加盟社での女性登用の目標・計画・実績を公表することを求めます。

 以下にメディア業界の現状と具体的な要請を示します。

【現状】
① メディアの業界団体の役員に女性が少なすぎる。
 日本民間放送連盟(民放連)、日本新聞協会(新聞協会)、日本書籍出版協会(書協)、日本雑誌協会(雑協)=以下「各業界団体」とする=の女性役員人数は、民放連45人中0人、新聞協会53人中0人、書協40人中2人、雑協21人中1人です。各業界団体は、各媒体の倫理水準の向上と業界共通の問題を扱っており、意思決定者には、多様なバックグラウンドをもつ人材を登用し、偏りのない意思決定ができるようにするべきです。

② メディア会社の役員に女性が少なすぎる。
 労組の調査では、民放連加盟のテレビ局127社中91社で女性役員ゼロ、女性役員は1797人中40人。ラジオ局98社中72社で女性役員ゼロ、女性役員は1051人中29名※、新聞38社の会社法上の役員数は、全体319人中、10人※、出版8社の会社法上の役員数は、全体254人中、21人※でした。
 メディア会社の意思決定者に著しく女性が少ないという実態が、数字で明確に示されています。

③ メディアのコンテンツ制作の意思決定者の女性登用が不十分
 労組の調査では、在京テレビ局の番組制作部門のトップに女性はゼロ※、新聞ではデスク・キャップなどの管理職の女性比率は8.5%※、出版では編集長・課長などの管理職の女性比率は22.9%※でした。メディアの意思決定層に女性が少ないことが、ジェンダーに偏りのある情報発信を生み、「無意識の思い込み」につながっています。また、2022年3月に報道された映画監督による女性俳優への性的関係の強要に象徴されるよう、仕事の割り振り、依頼等において、立場の優位性を背景にした性的関係の強要など、性暴力やセクシャルハラスメント・パワーハラスメントの根絶を遅らせている一因ともいえます。多様性を欠いたコンテンツ制作現場や労働環境では、視聴者や読者が離れ、やる気のある人材も集まりません。イノベーションには多様な人材が知恵を出し合うことが必要です。

※別紙、2021年5月民放労連調査、2020年3月新聞労連調査、2020年3月出版労連調査による。

【要請】
① 業界団体の女性役員比率について、数値目標や加盟各社からの女性管理職による特別枠を設け、すみやかに3割以上にすること。長期的に5割を達成する計画を立てること。
② 業界団体にジェンダー・男女共同参画に関する常設委員会を設置し、業界でのジェンダー平等を重要課題の一つにすること。
③ 業界団体の全加盟社が、遅くとも2025年までに役員の3割を女性にする目標をたて、行動計画と共に公表すること。また、全加盟社が、国の女性活躍推進企業データベース(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/ )で情報を公開すること。 

以上

<別紙>
2021年5月民放労連調査
・全国・在京・在阪 民放テレビ局の女性割合調査 結果報告
https://www.minpororen.jp/?p=1815
・全国・在京・在阪 民放ラジオ局の女性割合調査 結果報告
https://www.minpororen.jp/?p=1865

2020年3月新聞労連調査
新聞労連資料

2020年3月出版労連調査
出版労連資料