民放労連の組織概要・活動方針

民放労連ができた理由とその歴史

 民放労連(日本民間放送労働組合連合会、Japan Federation of Commercial Broadcast Workers’ Unions)は、日本唯一の民間放送の産別組織で、全国の放送局や放送関連プロダクションなど120組合・約7,000名が加盟している労働組合です。(東京、大阪、岡山には個人でも加入できる労働組合もあります。)
 1951年、名古屋の中部日本放送、大阪の新日本放送(現毎日放送)が日本で最初の民間放送として誕生しました。その後、次々に民放が開局し開局から少し遅れて各放送局内に労働組合が結成されていきました。
 当時の放送局は、低賃金で劣悪な労働条件でした。単組だけでは要求の実現もままならず、当時の労働組合幹部から「横の連携の必要性」が呼びかけられていきました。
 そして民間放送開始から2年後の1953年7月12日、9組合1,650名によって民放労連が結成されました。地上波放送局にとどまらず、民間放送に関わる多くの放送局や制作・技術プロダクションの組合が民放労連の旗のもとに結集し、各単組が統一要求を定め、闘争スケジュールを一致させることで、賃金・労働条件の向上を実現してきました。また、放送文化の発展にも大きく寄与してきました。

民放労連がめざすもの

 民放労連は、労働組合ですから、働くものの賃金・労働条件、職場環境などの改善を進めていくことは当たり前のことです。一方で、この60余年の歴史のなかで、視聴者・リスナーの立場に立った放送のあり方を中心的な課題として追求してきました。また、60年代、70年代に吹き荒れた放送中止事件など、国家権力や経済界などの放送への直接的・間接的な介入に対しては、民主主義社会に不可欠な言論・表現の自由を守るという立場で、運動を進めてきました。
 民間放送は、商業放送であっても放送である以上、放送法のもとに放送免許を取得し、公共の電波を国民から預かって放送しています。放送法の第1条にはその目的が書いてあります。

第1条
 この法律は、左に掲げる原則に従って、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。

1 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
2 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。
3 放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するように
  すること。

 これまでも、そしてこれからも、放送法第1条に定められているように、放送が「国民に最大限に普及」し、「表現の自由を確保」し、「民主主義の発達に資する」ことが放送の使命であることを忘れてはいけません。
 キイ各局の株式上場や持株会社化などにより、収益性への追求が強まり、今の民放経営者の多くは放送の目的が見えなくなってしまっているといっても過言ではなく放送ジャーナリズムのゆくえが危惧されています。
民放労連は、このような民放経営の姿勢をチェックし、視聴者・リスナーとともに開かれた放送をめざしています。
 60余年の歴史のなかで、民放労連が追求してきた姿勢はこれからも変わることなく、また放送の原点に立ち返り、あらためて放送の目的を見つめなおしていくことこそが重要です。

放送の公正のための「5つの指針」(1994年7月第79回定期大会)
① 視聴者に判断材料を提供する問題提起型報道に徹する
② 放送によって生じる利害関係者の反論権を保障できる番組づくりの体制を検討する
③ 少数意見を尊重し、それを放送に反映させる多様性原則を確立する
④ 内部的な自由を確保するために記者・制作者の権利が十分保障されるようにする
⑤ 放送・通信行政を総務省から切り離し、独立した行政委員会のもとに置く運動を推進する
番組制作者の権利(1991年第73回定期大会)
① 直接的に言論・表現に携わる放送関係者は、本人の同意なしに異職種への配置転換あるいは契約解除を受けない
② 直接的に言論・表現に携わる放送関係者は、自らが関与する番組、または取材担務から正当な理由なく排除されない
③ 企画・制作過程、放送結果などについて会社側の措置に異論や批判がある場合、それについての自分の意見を内外に公表する権利があり、それを理由にいかなる不利益待遇も受けない
④ 自らが関与する放送番組が議題となる社内の会議にも出席し発言する権利があり、そのことによっていかなる不利益待遇も受けない
⑤ 憲法上の規定に反する問題、あるいは自らの思想・信条・宗教に反する仕事を強要されない権利があり、拒否したことを理由にいかなる不利益待遇も受けない
⑥ 会社は、労働組合が団体交渉の席上で、放送番組について、あるいは制作者等の権利について議題とした場合、誠意をもって応じなければならない