総務省・放送を巡る諸課題に関する検討会「地域における情報流通の確保等に関する分科会とりまとめ案」に対する民放労連の意見

総務省・放送を巡る諸課題に関する検討会「地域における情報流通の確保等に関する分科会とりまとめ案」
に対する民放労連の意見を提出いたしました

総務省・放送を巡る諸課題に関する検討会「地域における情報流通の確保等に関する分科会とりまとめ案」に対する民放労連の意見

2017年5月10日

中央執行委員長 赤塚 オホロ

 

放送を取り巻く環境が大きく変化し、放送業界が一段と厳しい状況を迎えているこの時期に、政府が「頑張るローカル局を応援する」と題した提言を打ち出すことについては歓迎したい。しかし、この「取りまとめ案」に示されている「国の取り組むべき課題」は、的外れなものが少なくなく、むしろ弊害となりかねないことが危惧される。

 

「案」では、ローカル局が「特に、災害時に、国民の生命・財産の安全確保に必要な情報を効率的に伝達するメディアとして重要な役割を果たしている」としている。むろんこの認識に誤りはないが、災害放送の重要性ばかりをことさらに強調することは、かえってローカル局の果たすべき役割の過小評価につながるおそれがある。ローカル局には、豊かな地域性を背景に、報道のみならず娯楽、芸術、また地域に暮らす人々の活動を各地に発信するなどの幅広いコミュニケーション活動を担う公共的機能が期待されている。そうした日常の放送活動で培った信頼感が災害時にも大きな力となる、という関係にあるのであって、災害時のみに突然に放送局が公共的な重要性を発揮するわけではない。

 

「国の取り組むべき課題」としては「地域の放送コンテンツの二次利用の促進」「地上波4K放送の実現に向けた研究開発」「放送コンテンツ海外展開支援事業の新たな支援方策の検討」が掲げられているが、現在の政策の延長線上にあるこれらの策が地域の視聴者の期待に応えるものとは到底考えられない。とりわけ、新たな受信機器の購入など視聴者に過大な負担を強いることになる「地上波4K」を十分な検証もなくやみくもに推進することは、視聴者保護の観点から即刻中止すべきである。

 

「案」では「ローカル局の人材確保・育成の必要性」が言及されながら具体的な支援策は示されず、自助努力に任されているかのようだ。放送を担う人材の確保・育成に向けて、放送の多元性・多様性・地域性や表現の自由の確保に資する積極的な支援策が緊急に求められている。また、コンテンツの二次利用や海外展開が不可能と言っていいローカルラジオ局をいかに支援・活性化させるかについて、一切言及がない。政府がラジオ局支援に消極的だとすれば、それこそ災害放送の重要性に鑑みても大きな矛盾ではないか。

 

ローカル局の経営基盤の安定化は、地域の視聴者のニーズに即してはかられるべきであり、国策に沿った事業を展開しようとする放送局だけを恣意的に支援するような行政のあり方は、間接的な言論統制にもなりかねず、強い懸念を抱かざるを得ない。

 

以 上