政府による放送への圧力を排するために独立行政委員会の設置を求める(2023年3月10日)

2023年3月10日
日本民間放送労働組合連合会

 安倍政権当時の2014年から2015年にかけて、放送法における「政治的公平」の解釈をめぐって、官邸から総務省に対して法解釈の変更を迫っていた事実を記載した文書が国会で公表され、総務省はこれが同省の行政文書であることを認めました。当時総務相だった高市早苗経済安全保障担当相は「ねつ造文書だ」として内容を否定していますが、総務省側に直接働きかけたとされる礒崎陽輔首相補佐官(当時)は事実関係をおおむね認めています。
 2016年2月、当時の高市総務相の「一つの番組でも著しく政治的公平に違反した放送局には電波法に基づく停波を命じることができる」とした趣旨の国会答弁。さらには、総務省の「個別の番組について政府が政治的公平性を判断できる」との政府統一見解の背景に、首相官邸側から放送法解釈変更を迫る執拗な圧力があったことが、このほど明らかになったことになります。

 放送法は第3条で、放送番組について「何人からも干渉され、又は規律されることがない」とする「放送番組編集の自由」を掲げています。このため放送の「政治的公平」などを定めた放送法第4条は、放送事業者が自律的に遵守すべき倫理規定だと一般的に解釈されてきました。
 諸外国の放送行政では、政府とは一線を画した独立行政委員会による間接規制が通例となっています。政府が放送局の免許を直接掌握し、電波の停止命令を出すこともできるとする日本の放送制度は、国際的に異例と言うほかありません。そもそも政府が放送内容に立ち入って政治的公平性を判断すること自体が憲法・放送法に違反していると考えます。

 私たち民放労連は、「国家権力からの独立と放送の自由を保障するため、放送制度・放送行政を抜本的に見直し、政府から独立した、放送を所管する行政委員会の設置」との要求を運動方針に掲げています。放送制度の改革をめぐっては、政府による放送への不当な圧力を排するために、この直接免許制の見直し、独立行政委員会の設置の検討が最優先であるべきです。
 国連の自由権規約委員会も昨年11月、日本の放送制度について「放送・免許付与当局の独立性を確保するために必要なあらゆる措置を講じること」などとする総括所見を公表し、日本政府に勧告しています。今こそ、放送行政における独立行政委員会の設置を真剣に検討すべきだと私たちは考えます。

以 上