第125回定期大会 「表現の自由を守り、信頼される放送の確立をめざす決議」

表現の自由を守り、信頼される放送の確立をめざす決議

今年一月に東京メトロポリタンテレビジョン(MX)で放送された番組『ニュース女子』が、沖縄の米軍基地反対闘争に関してインターネット上に散見される事実無根の虚偽情報で構成されていたことに対して、市民から厳しい抗議活動が続いている。「フェイクニュース」と言われるデマや誤報が世界中で問題となっている今、私たち放送労働者の姿勢が問われている。

放送法四条には、放送局が守るべき倫理規定として「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などを定めている。私たちはこの精神を活かして、視聴者の「知る権利」に応えようとさまざまな番組を制作している。MXが制作中と伝えられる検証番組も、正確な取材に基づいて多角的な論点を提示する番組となることを期待したい。放送局が放送の自律を保てないと判断されるような事態が生じることがあれば、すぐさま法的な放送・言論統制が議論の俎上に上ることを忘れてはならない。

一方で、この放送法四条の問題点を突いた提言が、国際社会から示されている。昨年、訪日調査を行った国連「表現の自由」特別報告者のデビッド・ケイ氏が今年六月、正式な調査報告を国連人権理事会に対して行った。この中では「政府の介入を可能とする法的基盤を削除することでメディアの独立性を強化するため、政府が放送法四条を見直し廃止することを勧めたい」と記されている。これは、政治的公平が疑われる放送だと政府が判断した場合、その放送局に対して電波停止を命じる可能性があるということが大きな議論となったことを受けたものだ。実際に、政府が番組内容を理由として放送局に停波を命じたことは戦後一度もないが、総務省から放送局に対する厳重注意などの行政指導は繰り返し行われ、それが放送関係者への威嚇効果をもたらしている問題が指摘されている。

放送法三条は「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と規定し、政府や政権政党が放送の内容に不当に介入することを厳に戒めている。放送法四条を理由とした政府からの圧力に対しては、放送関係者が放送の自由を主張して、毅然とはねのければいいはずだ。

国連特別報告では、日本のメディアが権力に弱い理由として、ジャーナリスト同志の連帯が乏しいことが指摘されている。また、メディア幹部が政権トップと頻繁に会食していることにも、特別報告は厳しい批判を加えている。ここでも問われているのは、放送の現場で働く私たちの連帯と、経営者への監視の姿勢ではないか。

放送で働く私たちは、不当な圧力に屈することなく、視聴者の立場から放送・表現の自由を守り、信頼される放送を確立しなければならない。視聴者・リスナーの期待に応えるため、私たちはよりいっそう奮闘していくことをここに宣言する。

右、決議する。

二〇一七年七月三〇日

日本民間放送労働組合連合会 第一二五回定期大会