民放労連第129回定期大会「ハラスメントのない社会を!職場を!」(2019年7月28日)

 創立100周年を迎えた国際労働機関(ILO)は6月、スイスのジュネーブで開いた年次総会で、「仕事の世界における暴力とハラスメントに関する条約と勧告」を採択した。条約は、暴力とハラスメントは人権侵害だと明確に規定し、雇用労働者だけでなく、フリーランスやインターン、求職中の人などを広く保護の対象とした。
 ILO総会に先立って、日本では「ハラスメント規制法」が5月に成立した。これまでのセクハラ・マタハラに加えてパワハラにも防止措置が事業主に義務付けられた。しかし、今回の改正ではハラスメント行為そのものを禁止する規定はない。このような姿勢を反映して、日本政府は条約にこそ賛成したものの、ハラスメントを禁止する国内法の整備が求められる批准については消極的な姿勢を示している。採択を棄権した経済界代表の経団連が「上司の適正な指導とパワハラは線が引きにくい」とする主張に忖度したと疑わざるをえない。
 条約の成立を受けて、ILOのガイ・ライダー事務局長が「次の段階は、男女双方に、より良い、より安全で働きがいのある人間らしい労働環境が形成されるように実践に移すこと」と述べたとおり、まずは、政府に国内法整備を強く要請し、すべての労働者のディーセント・ワーク実現に向けた運動を強化しよう。
 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)がおこなった職域横断セクハラアンケートでは1061人から回答があり、見聞きした人を含め、被害にあっても相談・通報していない人は565人で、その理由は「相談しても解決しない」「仕事に支障が出るかもしれない」が多数を占めた。会社や組織が設けた相談窓口に相談・通報した52人のうち8割近くが「不適切な対応」と回答。「事情を話したが、調査もされずに放置された」という人が最も多く、諦めと我慢、放置という悪弊が蔓延している実態が露わとなった。
 またMICでは、各企業の経営者による「ハラスメント根絶宣言」を要求することを加盟各単産で全会一致により決定した。出版労連は今春闘において各組合で取り組むことを確認し、複数の出版社経営者が「宣言」に署名。このうち1社ではパワハラ被害で退職を余儀なくされた労働者の復職につながった。
 「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と憲法第13条は定めている。ハラスメントは個人の尊厳を踏みにじるものと私たち一人ひとりが自覚し、社会からの、職場からのその根絶に向けて一歩を踏み出そう。

 右、決議する。

 2019年7月28日
日本民間放送労働組合連合会 第129回定期大会