民放労連第130回臨時大会「誰もが安心して働けるハラスメントのない職場をめざす決議」(2020年1月26日)

 「きちんと調査すればわかることなのに、なぜ、ハラスメントが起きたことを会社は認めないのか」「ハラスメントの加害者がいるから出社できないのではなく、ハラスメントが職場に存在するから出社できない」ハラスメントによって適応障害や過呼吸症候群、うつ病などを発症し休職せざるを得なくなった、復職後も嫌がらせが続き、激化しているなど、いのちに関わる相談が民放労連や放送スタッフユニオンに寄せられている。
 昨年、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が行った職域横断セクハラアンケートでは、不適切な対応が二次被害を生み、被害を拡大させていることが明らかになった。会社や組織の相談窓口に相談した回答者の78.8%が不適切な対応をされ、事情を話したが調査もされず放置されたり、被害者側の過失を問われたり、いわれのない噂をたてられたりしている。
 イリノイ州立大学等の心理学研究によると、セクハラをする人の特徴は、共感の欠如、伝統的な性別の役割に対する信念、支配や権威主義への傾向があるが、どこでも必ず行うわけではなく、免責状態のある場にいるからセクハラをするということだ。わたしたちの職場ではどうだろうか。建前では、「ハラスメントは人権侵害、あってはならないこと」だが、本音では、「誰もがやっている、いちいち言われたら口もきけない、息苦しい」と思ってはいないだろうか。
 同質性の高い組織では、ハラスメントが起きやすいリスクがある。職場におけるハラスメントは、個人の問題だけでなく、それを許す風土のある組織の病だからだと、研究者は分析している。
 民放労連女性協議会の調査で、在京民放テレビ局の報道や情報番組などの制作現場の最高責任者に女性はゼロという実態が明らかになっている。それをあたり前のこととして捉えていないだろうか。女性比率が低いことによって、番組内容や表現にも影響し、働き方や職場の雰囲気にも大いに関わると女性協は分析している。生活者目線が欠如したコンテンツによって、視聴者や就活生など若い人のテレビ離れが起きているのではないだろうか。
 放送業界のように同質性の高い組織が、多様性があり、誰もが安心して働ける職場になるためには、ジェンダーバランスを改善し、育児や介護などの事情にとらわれない労働時間による差別のない働き方に変えていく必要がある。
 6月からパワーハラスメント対策が初めて義務化される。セクハラやマタハラ等の防止対策も強化され、国・事業主・労働者の責務が明確になる。形式的に相談窓口を設置するのではなく、相談者に寄り添う対応、事業主がハラスメント根絶宣言をする、就活生やフリーランス、求職者も保護の対象とする、法律でハラスメントそのものを禁止するなど、昨年成立した国際労働機関(ILO)のハラスメント禁止条約の批准ができる社会になることが求められている。
「政策を作るのは政府、風土を作るのはメディア」と言われる。メディアの業界で働く労働者ひとりひとりは弱い存在だ。嫌ならやめればいいという呪いの言葉に屈することなく、勇気を出して声をあげ連帯しよう。すべての職場からハラスメントをなくし、安心して働ける放送業界と社会を築いていこう。

2020年1月26日
日本民間放送労働組合連合会 第130回臨時大会