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2005年版 課題別の要求や取り組み

はじめに

 「女性が幸福にならなければ世界は平和になりません」
これは、日本国憲法に「男女平等」を書いた女性、ベアテ・シロタ・ゴードンさんのことばです。今年、戦後60年を迎えた日本はいろいろな意味で節目を迎えています。
郵政民営化法で揺れる政局ですが、小泉首相の靖国参拝や歴史教科書問題など、改憲による、“戦争できる国”づくりへ突き進もうとする姿に、不穏な空気を感じます。
憲法9条ばかりでなく、ジェンダーフリー、男女平等へのバックラッシュなの逆流がいちだんと強まっている中で、第24条の「両性の平等」へ着手しようとしたことは、紛れもない事実です。24条に関して今は影を潜めたとはいえ、「従軍慰安婦ななかった」発言など、政府高官の発言は尋常ではありません。時計の針を逆戻りさせることなく、今私たちは行動する時と言えましょう。
法的には男女平等社会・女性の地位向上の実現にむけて整備が進み、育児・介護休業法が改正されているにもかかわらず、女性が働きながら子育てをしていく事が困難な実情があること、長時間過密労働は依然改善されず、退職を余儀なくさせられることが、まだ出てきています。 急速にすすむ少子化に歯止めをかけ、社会全体で次世代を担う子どもたちが健やかに生まれ育てられる環境整備にとりくむことを目的とした「次世代育成支援対策推進法」が成立し、2006年の男女雇用機会均等法改正に向け、厚生労働省政策審議会雇用均等法部会が中間とりまとめを発表するなどの動きに、敏感に反応し行動していくことがなにより必要です。

 放送の問題では、NHKの度重なる不祥事、自民党政治家の介入による番組改ざん事件をめぐって、NHKのあり方が問われました。ニッポン放送株をめぐる、ライブドアとフジテレビの問題では「放送局は誰のものか」が問われ「放送局の公共性」も話題になりました。視聴率操作問題以降、テレビ全体への不信感は増大するばかりですが、放送業界内ではそれに逆行するかのように、効率化・能力給導入などの動きが盛んです。私たちはその中で、テレビ局のあり方を改めて問い、今、何ができるかを見極める力を持ち続け、連帯することによってより大きな力を生み出し、発展させなければならないと思います。



課題別方針

一、「男女雇用機会均等法」から「男女雇用平等法へ」

2年前、国連・女性差別撤廃委員会において、日本の「女性差別撤廃条約」実施状況の審査が行われた際、日本の差別撤廃の遅さが厳しく指摘されました。
「コース別雇用管理制度に表される男女賃金格差、間接差別の慣行・影響への理解の欠如、給料が低いパート・派遣労働に女性が多いこと、仕事と家庭生活の両立の措置の強化、家庭的仕事の分担、女性の固定的な役割の変化の促進」を勧告されています。そこで、『直接・間接差別の定義を国内法に盛り込むこと』と言明しています。法整備だけれなく、「男女の役割分担認識を変え、平等への意識啓発キャンペーン」の必要性も言われてました。

現在、厚生労働省・労働政策審議会雇用均等分科会で、06年の改正に向けての作業が行われています。成立時からザル法と言われている「男女雇用均等法」ながらも、改正を重ねていいものにしていけるか否か、は私たちにも責任があります。
批判するだけではなく、よい提案をできるよう、私たちも学び、考える必要があります。

男女雇用機会均等法の精神とするところを重視し、法規制の条件にとらわれることなく、真の「結果の平等」をめざしましょう。そのためには、女性へのアファーマティブアクション(今までの格差是正のための優遇処置)も含めて要求していくことが必要です。

〈具体的な要求項目〉

採用基準・昇進昇格基準を明確にし、育児・介護など家族責任を持つ男性・女性に昇進・昇格の不利を生じさせないこと。
すべての職位・役職での社内の女性比率と同等にすること。
社内プロジェクト・製作決定現場・意思決定機関での女性比率をあげること。
結婚、出産、年齢などを理由とした退職勧奨、処遇への差別をおこなわないこと。
深夜・泊まり勤務は男女を問わず、本人および当該職場の同意のもとに協議すること。
セクシャルハラスメント、ジェンダーハラスメントのみならず、間接差別のない職場をめざし、具体的な救済措置、予防策を講じること。積極的な格差是正(ポジティブアクション)を行うこと。
また、派遣労働者のほとんどが女性である現実から、
派遣労働は臨時的・専門的な仕事に限定し、導入と労働条件については労使協議の議題とし、労使協定の締結を求める。請負を偽装した契約を派遣契約に改めさせ、会社に派遣法・安全衛生法の遵守を要求する。

<とりくみ>

 1. 同じ職に就きながら、僅差を意図的に生じさせられやすい労働環境に身をおいていることを常に自覚し、成果主義・能力主義の不当な導入、特に養育手当て等の家族責任に必要な基本的な手当て廃止を反対する。
 2. 間接差別の温床となるセクシャルハラスメント、ジェンダーハラスメントのない職場をめざし、具体的な救済措置、予防策を講じること。
 3. 「女子保護」撤廃を理由とした女性への深夜労働の押し付け、休日出勤増などの、一方的な労働条件の不利益変更に反対する。
 4. 男女雇用機会均等法、男女共同参画法を積極的に活用する。
 5. 労基法を「最低」基準としてそれ以上の労働条件を獲得する。


二、次世代を育むための社会整備

今年上半期に日本の人口が約3万人減ったことが、人口動態統計で分かりました。予測より二年早く、このまま人口減少時代に突入する可能性を示すものです。4年連続、少子化が進んでいる日本。2002年1月に発表された「日本の将来推計人口」によると、晩婚化に加え、「夫婦の出生力そのものの低下」が少子化の原因と指摘されています。 急速な少子化の進行は、社会経済全体に極めて深刻な影響を与えるものであることから、国は2003年7月に「次世代育成支援対策推進法」を制定しました。
この法律は、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境の整備を行う「次世代育成支援対策」を進めるため、「301人以上の労働者を雇用する事業主は、2004年度末までに「一般事業主行動計画」を策定し、2005年4月1日以降、速やかに届け出なければならない」としています。(雇用する労働者が300人以下の事業主には、同様の努力義務がある)
また、一定の要件を満たした事業主は、都道府県労働局長の認定を受けることができます。今後、この法律に基づき、各企業は従業員の仕事と家庭の両立に関して、具体的な行動計画を策定することが義務づけられており、私たちが働く放送局は、率先して掲示するべきであると考えます。
次世代支える子供たちを国全体で育てる環境作りを、まずは自分たちの周りから作り上げましょう。

<要求>

 1. 次世代育成支援法によって、積極的に育児休業取得を奨励し、ファミリーフレンドリーな企業を目指すこと。
 2. 子供が健やかに成長するために必須な環境を脅かすような配属・転勤を行わないこと。
 3. すべての前提となる、ひとりひとりの「いのちと健康」に対して最善の策を常に講じること。

<とりくみ>

 1. 育児・介護休業制度、時短制度を本人への精神的負担をも考慮した上で確立する。
 2. 男女ともに、子供の有無に関わらず家族責任について共通の認識をもち、取得者とともに問題解決に努める。
 3. すべての前提である、ひとりひとりの「いのちと健康」を自らが大事にし、お互いに気をつけあう努力をする。

<育児・介護休業法の要求基準>

 1. 賃金を6割以上保障すること。
 2. 男女とも適用すること。特に男性の取得を積極的にすすめること。
 3. 現職復帰を原則とすること。休業中の情報伝達手段を確保すること。
 4. 代替要員を確保すること。
 5. 休業期間は育児休業の場合は3年間を限度に必要期間とし、看護・介護休業はその都度必要期間とすること。
 6. 上記休業期間中の社会保険料は、全額会社負担とすること。
 7. 休業期間は勤続通算すること。「評価なし」期間とならないような配慮をすること。
 8. 代休、年次有給休暇の基準は本人の任意選択とし、規制を加えないこと。
 9. 育児時短、看護・介護時短を制度化すること。
10. 休業を理由に一切の不利益扱いをしないこと。



三、放送のあり方と私たち

放送メディアにおいて女性が参画することによって、提供する情報の内容が男性のみの視線に偏ることが防止されると期待される。また性・暴力表現においてしばしば弱者となる女性の人権に配慮した表現も、作り手側にいる女性達は過度の表現にならないような抑止力となる。より良い番組、放送ジャーナリズムのあり方、本当に公正な放送とは何かを、日常的な職務の中に反映させ、またよりよいメディアのあり方を訴え続ける取り組みが、マスコミへの不信感が渦巻く今、もっとも必要といえる。

< 要求>

マスコミが社会に与える影響を今一度自覚し、ILOからも指摘されている、「男女の役割分担認識」を刷り込むような放送内容に気をつけ、あらゆる年代への「平等への意識啓発」「次世代育成への支援」となるような表現を意識すること。

<とりくみ>

 1. 視聴者の半数以上が女性であることを放送局に自覚させ、全ての番組に対して「男性目線」だけの放送にならないように働きかけること。
 2. 次世代育成の観点から、会社として地域や社会への貢献を行うよう、働きかけること。
 3. 地域の視聴者・聴取者との交流をもち、放送について話し合う機会を積極的に進めること。その際、放送やその他の情報の特性を理解してもらうことで、テレビの付き合い方を学ぶ、メディアリテラシー(media literacy)は相互にとっての接点となりえるため、この推進に努めること。



四、活力ある組合運動の基盤作り

我々の働く放送業界は、放送局だけでなく、制作プロダクション・放送関連企業など多種多様な職種があり、抱えている問題も多岐にわたる。その悩みに加え、少数派である女性ならではの問題も少なくない。成果主義の導入やコース別人事、差別雇用拡大、女性の昇進、セクシャルハラスメント…。
しかし一方、派遣社員の雇用が増えて正社員が減少することによる組合員の高齢化、減少化等により、組合活動(特に女性部)の活動は縮小傾向にあることも現実である。
女性協議会では年2回拡大常任委員会を開催し、各地連委員がそれぞれの単組の悩みや問題、成果などを報告し合い、活発な情報交換がおこなわれる。また、来期の北海道大会で43回めを迎える女性のつどいは、毎年大変な盛り上がりで、女性のパワーを実感し元気の源となるイベントだ。働く女性の中央集会や日本母親大会は、業種を越え、全国から集まった仲間たちと意見を交える貴重な場でもある。
ひとりで悩みを抱え込むのはやめよう。声に出すことで、同じ悩みを持った仲間と情報を共有し、問題解決の糸口を見出せるかもしれない。厳しい環境に置かれている今こそ、労働組合の必要性は高まっている。「集いの場」としての組合を育て、みんなが働きやすい環境を目指して力を結集していこう。

<とりくみ>

 1. 第43回全国女性のつどいを成功させる。
 2. 女性部の活性化をはかり、執行部に女性執行委員を選出する。
 3. 女性部がない場合は、執行部として男女共生の問題解決を目指し、女性が定期的に集まる場を確保する。
 4. 未組織者も参加できる学習、交流の場をつくる。
 5. 地連女性協の強化、組織づくりに努力する。
 6. 各地にマスコミ文化情報労組会議の女性連絡会をつくり、同じ要求、運動のために共闘を進める。


五、平和で、自由な社会をめざす

 今年は戦後60年、しかし世界は平和への道へ向かってないどころか、むしろ今世紀に入りさらに恐ろしい状況が顕在化しているように思えてなりません。
 日本では、今、憲法9条を変え「戦争をできる国」にしようとする動きが出ています。自民党は8月1日に発表した「新憲法第一次案」で「自衛軍を保持する」と明記し、戦力不保持・交戦権否認を定めた憲法の平和主義を全面的に否定しています。

 一方、昨年、大江健三郎さんや澤地久枝さんら九人が呼びかけ人になって結成された「九条の会」に賛同する会が地域や職域で作られ、九条を擁護する草の根の運動が広がりつつあります。
各地で女性たちがユニークな運動を展開している場面も目にしました。放送局がこうした動きを伝え、市民レベルの運動との連帯を発展させていくことが課題ではないでしょうか。

 憲法改憲への動きが加速している中、改憲手続きを定める国民投票法案の提出が浮上していますが、表現・報道の規制など多くの問題が指摘されていて、私たちメディアに携わる者として見逃すことはできません。

 「有事」関連法のもと、放送局の指定公共機関化がすすめられています。民放労連は「報道機関の独立性、自立が脅かされる」として指定返上・辞退を民放各社や全国の都道府県に要請や申し入れをしましたが、自治体からの執拗な要請の前に放送局が残念ながら指定を受諾するということになってしまいました。
今後、放送局の「国民保護協議会」への参加を許さず、「業務計画」においても有事体制に放送局を自ら組み込むような計画を作成することがないよう、私たちはチエックしていくことが重要です。

 指定公共機関の問題も、憲法改悪の問題も、イラクの自衛隊派遣継続の問題もすべて日本を戦争のできる国にしようとする動きにつながっています。
 平和はすべての源泉。平和を創り上げていくために、私たちは今こそ声を上げ、力を合わせ行動していきましょう。

<とりくみ>

 1. 憲法改悪の動きに反対します。
 2. 民放労連、MICなどの平和への取り組みに積極的に参加します。

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