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2004年版 課題別の要求や取り組みなど

 国連開発計画(UNDP)が発表する「人間開発報告書2003」によると、日本は、平均寿命、教育水準、成人識字率、1人当たり国民所得などを用いて算出するHDI(人間開発指数)において、世界第9位でした。一方、女性の稼動所得割合、専門職・技術職・管理職に占める割合、国会議員に占める割合を用いて算出するGEM(ジェンダー・エンパワーメント指数)では、前回32位から44位へとランクを下げました。つまり、日本は、世界的にみて人間の基本的な能力の伸びが高水準であるのに、女性の政治的・経済的分野への参加が低い、ということになります。換言すれば、女性に対する社会的な差別が根強いことに他なりません。
 では、我々が身を置く「放送業界」はどのような状況であるのでしょうか? 確かに、女性が多岐にわたる分野に従事するようになりました。かつては、男性中心とされていた業務でも、その最前線で女性を見掛けることも珍しくなくなりました。諸先輩方のご努力のお陰で、出産しても働き続ける女性もかなり増えました。ただ、この業界では、真に女性たちが個人の能力を存分に発揮し、その業績に対して正当な評価を得られているのでしょうか?制度的なバックアップが充分になされているのでしょうか?諸制度が「家族責任や人間らしい働き方をするための制度」として理解され運用されているのでしょうか?残念ながら、本来あるべき姿とは大きなギャップがあります。未だ、女性の雇用差別、 処遇の不平等、育児や介護制度の未整備等、多くの問題を抱えています。同時に、これらの問題は、今や女性特有のものではなく、働く男性にも共通する深刻なものになっています  民放労連女性協として早40年が過ぎ、これまで女性に関わる様々な取り組みが行われてきました。この間、民放業界も多極化し、一口に「民放業界で働く女性」といっても、地域、創設時期、業種等によって、環境の格差が生じています。今こそ、各職場の女性たちが客観的に自分の置かれた立場を把握し、不安や疑問を感じることに対し、具体的な対処法を見出さなければなりません。その際、最も有効かつ効率的な情報収集や意見交換を実現するのは、 今年立ち上がった「民放女性協のホームページ」です。女性協の新たなコミュニケーションツールとして、大いに活用してください。
 最後に、女性協としては、先日、自民党の憲法改正プロジェクトチームが提出した「婚姻・家族における両性平等の規定の見直し案」に対して、強く反対の意を示していきたいと考えます。この改定案の理由として掲げられた「共同体の価値を重視するため」は、正に我々が目標とする「男女共生の社会」に逆行する上に、働く女性の権利を奪う大問題になるからです。今後も動向の推移を見ながら、積極的に反論していきたいです。


一、雇用破壊発生の認識

<要求>

一、嘱託・契約制度、コース別採用制度など、差別を生じさせる雇用形態を新たに導入しないこと。
<とりくみ>
一、同じ女性間で二極化が生じる労働環境に身をおいていることを常に自覚し、仲間意識を保持できるようにする。
二、派遣労働は臨時的・専門的な仕事に限定し、導入と労働条件については労使協議の議題とし、労使協定の締結を求める。請負を偽装した契約を派遣契約に改めさせ、会社に派遣法・安全衛生法の遵守を要求する。
三、改正派遣法に基づき、三年以上継続して働く派遣労働者のいる職場に新たに人を雇い入れるときは、その派遣労働者を直用化することを求める。



二、男女ともに働きやすい環境の獲得


<要求>
一、採用基準・昇進昇格基準を明確にすること。
二、深夜・泊まり勤務は男女を問わず、本人および当該職場の
  同意のもとに協議すること。
三、セクシャルハラスメント、ジェンダーハラスメントのない職場をめざし、具体的な救済措置、予防策を講じること。
<とりくみ>
一、「女子保護」撤廃を理由とした女性への深夜労働の押し付け、休日出勤増などの、一方的な労働条件の不利益変更に反対する。
二、男女雇用機会均等法、男女共同参画法を積極的に活用する。
三、労基法を「最低」基準としてそれ以上の労働条件を獲得する。
四、査定の拡大、能力主義の不当な導入を反対する。



三、お互いの“性”を尊重し、“人間らしい”生活を

<要求>

一、生理休暇は本人の請求により、必要な期間を有給で保障すること。
二、産休は産前産後8週間通算16週以上を有給で保障すること。
三、通院休暇は医者の指示に従って必要な時期に必要な回数を有給で保障すること。
四、妊娠障害、流産休暇は必要日数を有給で保障すること。
五、妊娠時短は一日一時間以上、医者の指示に従って必要な時間を有給で保証すること。
六、授乳時間として労働基準法で定められている1時間の時短とは別に、これを超える育児時短は一日1時間以上、有給で保障すること。
七、妊産婦の危険有害業務、深夜労働、時間外労働を禁止すること。
<とりくみ>
一、すべての職場で育児休業制度、看護・介護休業制度を確立すること。
すでに制度があるところでも改正育児介護休業法にもとづき、制度内容の改善を図ること。
二、制度の確立、内容の改善に際しては「要求基準」が実現するよう取り組む。
三、雇用保険法を守り、育児給付金を確実に支給させるとともに、育児休暇中の健康保険料と厚生年金保険料の免除を確実に行わせること。  (95年4月1日から育児休業中の健康保険料と厚生年金保険料の労働者負担分は免除されることになりました。事業主負担分についても、厚生年金保険料が2000年4月より、健康保険料が2001年1月より免除されることになりました。)
四、制度利用者へのアンケート調査などに取り組む。
五、他団体と共同して署名や国への要請行動などに取り組む。
六、職場環境を調査し、環境・条件の改善に取り組む。
七、健康診断(特に婦人科系)の充実を要求する。
八、2002年4月、厚生労働省が出したVDT作業におけるガイドラインを活用し、作業基準の改善、環境整備を要求すること。
九、タバコによる煙害防止のため、職場での分煙・禁煙措置を要求すること。

育児・介護休業法の要求基準
一、賃金を6割以上保障すること。
一、男女とも適用すること。
二、現職復帰を原則とすること。
三、代替要員を確保すること。
四、休業期間中の社会保険料は、全額会社負担とすること。
五、休業期間は育児休業の場合は3年間を限度に必要期間とし、看護・介護休業はその都度必要期間とすること。
六、休業期間は勤続通算すること。
七、代休、年次有給休暇の基準は本人の任意選択とし、規制を加えないこと。
八、育児時短、看護・介護時短を制度化すること。
九、休業を理由に一切の不利益扱いをしないこと。



四、家族責任の確認

<要求>

一、育児・介護など家族責任を持つものが不利となる評価制度・昇進昇格制度を導入しないこと。
二、「子供」が健やかに成長するために必須な環境を脅かすような配属・転勤を行なわないこと。
<とりくみ>
一、育児・介護休業制度・時短制度を、本人への精神的負担をも考慮した上で確立すること。
二、男女ともに、子供の有無にかかわらず“家族責任”について共通の認識をもち、取得者と共に問題解決に努めること。



五、ポジティブアクションの啓発

<要求>
一、ポジティブアクションを推進し、具体的な計画案を提示すること。
二、結婚、出産、年齢などを理由とした退職勧奨、処遇への差別をおこなわないこと。
〈とりくみ〉
一、全ての職位・役職は常に女性比率を意識させ要求すること。
二、あらゆる職場・会議も男女比率を均等にするよう要求すること。
三、女性であることを理由とした諸手当の差別を撤廃すること。



六、放送業界で働く女性ならではのメディアへの働きかけ

<とりくみ>
一、視聴者の半数以上が女性であることを放送局に自覚させ、全ての番組に対して「男性目線」だけの放送にならないように働きかけること。
二、地域の視聴者・聴取者との交流をもち、放送について話し合う機会を積極的に進めること。



七、活力ある組合運動の基盤作り

<とりくみ>
一、女性部の活性化をはかり、執行部に女性執行委員を選出する。
二、女性部がない場合は女性が定期的に集まる場をつくる。
三、未組織者も参加できる学習、交流の場をつくる。
四、地連女性協の強化、組織づくりに努力する。
五、各地にマスコミ文化情報労組会議の女性連絡会をつくり、同じ要求、運動のために共闘を進める。
六、はたらく女性の中央集会、日本母親大会、国際婦人デーに積極的に参加する。


八、平和で自由な社会をめざす

<とりくみ>
一、憲法改悪の動きに反対する。
二、イラクへの自衛隊派遣に反対する。派遣の中止を求めて、各地のMICや地域の労働組合、市民団体との共同の取り組みを進める。自衛隊の「多国籍軍」への参加に反対する。 三、有事法制の発動を許さず、民放を「指定公共機関」とする動きに反対する。

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