「新型インフルエンザ法案」に反対する民放労連の声明
2012年3月30日
日本民間放送労働組合連合会
中央執行委員会
政府が今通常国会に提出した「新型インフルエンザ等対策特別措置法案」について、私たち民放労連は以下のような問題点があることから、その成立に強く反対する。そもそも、いわゆる新型インフルエンザが大流行する具体的なおそれは確認されておらず、緊急に新法を制定して対策を講じなければならない事情も見当たらない。法案では未知の感染症も対象としているが、このようにあいまいで薄弱な根拠に基づいて、以下に指摘するような基本的人権の侵害が法律で正当化されるようなことは断じて認められない。
法案では、新型インフルエンザが「国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある」と認められるとき、首相が緊急事態を宣言し、その際に都道府県知事が、多数の人が集まる集会の開催の停止の要請・指示などができる、としている。集会の自由は、憲法が保障する表現の自由の重要な一形態であり、すべての人々に保障された基本的人権の一つであることは言うまでもない。現代社会においてとくに重要な価値を持っているこの権利を、具体的な必要性の立証もなしに不当に制限を加えることは決して許されない。とくに、「そのおそれがある」などといった、いくらでも拡大解釈が可能な文言を法律の条文に忍び込ませることは、基本的人権の制約にかかわるような問題をめぐってはとりわけ厳しく排除されなければならない。
また法案では、公共性の高い業務に携わる民間企業などを「指定公共機関」に指定する制度が盛り込まれ、業務計画の策定を義務付けられるほか、緊急事態宣言のもとで首相や都道府県知事から指示を受ける立場にされる。放送関係ではNHKが指定公共機関として法案に明記されているが、民放各局も指定地方公共機関として都道府県知事から指定を受けることになるとされている。これは災害対策基本法や国民保護法の枠組みをそのまま持ち込んだものと解釈できるが、放送局が政府の指示を受ける対象として組み込まれることは、報道機関としての権力監視機能を失うことを意味する。
私たち民放労連は、国民保護法にもとづく放送局の指定(地方)公共機関化に対して、同法成立以前から一貫して反対の姿勢をとっており、今回の新型インフルエンザ法案についてもその姿勢には変わるところはない。また、政府の発表をそのまま流し続けることが報道機関としての信頼をいかに失墜させるものであるかということを、私たちは東京電力福島第一原子力発電所事故報道の経験で、いやというほど知らされた。放送局の新たな「指定公共機関」化について、私たち民放労連は断固反対することを言明する。
以 上