2002年の民放労連の見解・声明

地上デジタル放送開始計画についての民放労連のパブリックコメント(2002.8.28)

「全国地上デジタル放送推進協議会」発表に対する見解(2002.7.24)

「有事3法案」と「メディア規制2法案」の国会審議入りに抗議し、廃案を求める委員長談話(2002.4.27)

和歌山毒物カレー事件裁判における放送テープ証拠採用についての見解(2002.3.28)

第94回臨時大会アピール(2002.1.26)


2001年の民放労連声明・見解

2000年の民放労連声明・見解

1999年の民放労連声明・見解

1998年以前の民放労連声明・見解

   

地上デジタル放送開始計画についての民放労連のパブリックコメント

                           2002年8月28日
                           日本民間放送労働組合連合会
                                中央執行委員長 碓氷 和哉

はじめに
 地上放送のデジタル化計画は、今年7月に「全国地上デジタル放送推進協議会」がアナアナ変更にかかわる費用を従来の2.5倍にもなる1800億円と試算したことから、大きな見直しを迫られている。

 しかし総務省は2003年のデジタル放送開始、2011年のアナログ放送終了のスケジュールに固執している。 今回の見直しでは、3大広域圏以外のチャンネルプランを削除し、アナアナ変更を先送りしている。このことは現在のデジタル化計画の破綻を総務省自らが認めたものであり、2003年のデジタル放送開始に固執することなく、現在の計画を凍結することを求める。
 デジタル放送計画をこのまま強行すれば視聴者に大きな混乱・不利益を招くことは必至である。改めてデジタル放送計画について国民的議論を喚起し、放送のデジタル化のもたらすメリット、デメリットについて視聴者に十分な理解が得られるようにすること、国民の理解が得られない段階でデジタル化を強行しないことを求めるとともに、電波利用料の投入も市民・視聴者の理解が得られるまで凍結することを求める。

  また今回、NHKの茨城県域放送を新たに導入している。アナログ放送では民間放送に周波数を割り当てていたものを、デジタル放送でNHKにのみ周波数を割り当てることは放送行政の大きな方針転換である。総務省はこれについての説明責任を果たすべきである。 地上放送のデジタル化は国民すべての生活にかかわる重要な問題である。そうした重要な問題にかかわる意見募集について、総務省が広く国民に周知する努力をしていないこと、また募集期間もわずか3週間という短期間であることは極めて遺憾である。

パブリックコメント

1、デジタル放送の開始およびアナログ放送の終了について

 今回の放送用周波数使用計画の変更案では、三大広域圏以外のデジタル放送用周波数、アナアナ変更計画のチャンネルプランが削除され、2011年としていたアナログ放送用周波数の使用期限も白紙に戻されている。これらについては3年後に定めるとしており、実質的にスケジュールの先送りがなされている。
 しかし、デジタル放送の開始を三大広域圏では2003年、その他の地域では2006年とする一方、アナログ放送の終了は2011年としている『放送普及基本計画第1の1(1)ア(エ)』は、今回の見直しの対象となっていない。このことは2011年のアナログ放送終了を含めて地上放送のデジタル化スケジュールに固執する姿勢の現れである。
  アナアナ変更対策は2009年度まで継続される見通しで、そうなれば2年足らずの間にデジタル対応受信機の購入を余儀なくされる視聴者が発生する。あるいはアナログ放送の終了によりテレビを受信できなくなる地域が発生するおそれもある。
 これは総務省が述べてきた「10年間であらゆる国民視聴者層が無理なくデジタル放送へ移行」という主張と大きな矛盾をきたすことになる。
  以上のように現在のデジタル化スケジュールはすでに破綻をきたしている。このまま計画を強行すれば市民・視聴者に大きな混乱を招くばかりでなく、経済的負担、アナログ放送終了により受信ができなくなるなどの不利益をもたらすことになる。地上放送のデジタル化計画は一旦凍結し、計画の再検討をするべきである。

  2、2003年から予定されている地上デジタル放送を延期すること

  放送用周波数使用計画では、デジタル放送用の周波数はアナアナ変更の終了後に使用させるとしている。
 しかし東京地区では2003年中にアナアナ変更が終了する可能性はきわめて低く、デジタル放送を開始するにあたり、小電力による放送が計画されている。微小な電力であれ、当該周波数をアナアナ変更終了前にデジタル放送用に使用することは放送周波数使用計画に明らかに抵触するものであり、総務省が上記のような状況を承知の上で免許を交付すれば、自ら定めたルールを侵すことになる。
  一方、デジタル放送の開始により、現在のアナログ放送視聴世帯(特にUHF帯の受信)におけるブースター障害も懸念されている。総務省・放送事業者は、この問題を認識していながら、視聴者には知らされておらず、対策案も示されていない。このままデジタル放送を開始すれば視聴者に混乱を招くばかりか、デジタル放送に対する不信感をつのらせることにもなる。
  このような状況のもとで、デジタルによる本放送を実施することは到底不可能であり、2003年のデジタル放送開始は延期するべきである。

3、電波利用料の使用について

 アナアナ変更対策に要する費用は、昨年試算された727億円(キイ・準キイ局の送信対策費用を合算すると852億円)から1800億円へ大きく膨らんだ。総務省はその財源に電波利用料を充てるとしているが、2009年度まで毎年、利用料歳入の半額に迫る約200億円以上を支出することになる。
 地上放送のデジタル化計画が周知されていない現在、このことが電波利用料の8割以上を負担している市民・携帯電話利用者に理解されているとは到底考えられない。費用が大幅に膨らんだ以上、その財源を見直すことは当然であり、電波利用料をアナアナ変更対策のために投入することは国民の理解が得られるまで凍結するべきである。

4、NHK総合の茨城県域放送について

 NHKによる関東圏での県域放送についてはデジタル化を機にNHKが参入を希望する一方で、関東独立民放や民放連は慎重な対応を求めていた。 総務省は、2001年7月の地上テレビ放送のデジタル化に関するパブリックコメント募集結果発表の際、「『NHKの関東ローカル放送』の導入の是非については、放送に関する技術の発達及び需要の動向、地域の自然的経済的社会的文化的諸条件その他の事情を勘案して別途対応すべきものである」と「考え方」で述べている。
 しかし今回、NHKの茨城県域放送を認めるにあたって、上記事情が勘案された形跡はまったくないうえ、関東の他の都県でNHKの県域放送を実施するかどうかも明らかにされていない。アナログ放送で割り当てられていた茨城県の民放の周波数割り当てをなくし、NHKの県域放送を新たに認めることは、「NHKと民放の2本立て」としてきた従来の放送行政の根本を崩すものである。
 総務省はNHKの県域放送を導入するに至った検討の経緯と、他の都県での県域放送導入計画の全体像を示し、その説明責任を果たすべきである。
                                                                 以 上

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「全国地上デジタル放送推進協議会」発表に対する見解

                           2002年7月24日
                           日本民間放送労働組合連合会
                                中央執行委員長 碓氷 和哉

 総務省、NHK、民放で構成する「全国地上デジタル放送推進協議会」は7月19日、「アナアナ変更」対策費用の総額を1800億円とする調査結果を発表した。そして片山総務大臣は同日の記者会見で、その全額を国が負担する方向であると述べた。

 この対策費用は「全国推進協議会」の前身である「地上デジタル放送共同検討委員会」が2000年4月に発表した727億円に比べて2.5倍にも膨れ上がっている。
 このことは、
@現在の地上デジタル放送計画がきわめて杜撰なものであること、
A「アナアナ変更」対策が2006年以降にまで及ぶことから、地上デジタル放送の東阪名2003年放送開始と2006年全国一斉放送開始計画の前提が崩れ去ったこと、
を示している。

 しかし、総務省と放送事業者はすでに破綻しているこの計画に固執し続けている。これは「初めに計画ありき」の、国民不在の地上デジタル放送計画と言わざるを得ない。
  政府は、対策費用の1800億円の財源は電波利用料を充てるとしているが、アナアナ変更対策としてこれまで、平成13、14年度(2001、2002年度)予算に合わせて250億円を計上している。このため電波利用料は歳入を歳出が上回る結果となっている。この上さらに2009年度まで毎年、歳入の半額に迫る約200億円以上を支出することを総務省は考えているという。こういったことが電波利用料の8割以上を納めている携帯電話事業者や電波利用料を負担している携帯電話利用者に理解されているとは到底考えられない。
  また2009年まで「アナアナ変更」対策を続けるということは、2009年以降にやっとデジタル放送を開始できる地域が存在することを示しており、2011年7月にアナログ放送を中止する現在の計画では、そうした地域ではデジタル放送が開始して1年あまりの間に、受信機を買い替えない限りテレビ放送が受信できなくなる。これも視聴者不在、市民無視の政策である。

  総務省の「衛星時代の普及の在り方に関する研究会」では、アナログ衛星放送の中止をめぐって「BSアナログ放送の終了時期を明確にし、BSデジタル放送への移行を推進すべきである」と民間放送事業者、BSデジタル放送事業者は主張する。
 これに対しNHKは「BSデジタル放送の普及という名目でアナログ放送を強制的に終了させてしまう考え方は、視聴者の実態およびその利益を無視した本末転倒の考え方である」と主張し、真っ向から対立している。2007年に現在の衛星の寿命が来るとされているアナログ衛星放送の終了の時期さえ決められないのに、その3倍以上の世帯に普及している地上アナログ放送の終了を決定している現在の政策はまさに暴挙である。放送事業者は国のデジタル化計画に盲従するのではなく、視聴者本位に立ち返って放送のあるべき姿を考える責任がある。

  国民生活に大きな影響を与える放送のデジタル化については、放送事業者や放送機器メーカーの利益ではなく、市民・視聴者の利益を第一にした放送の将来像、グランドデザインを創り上げていくことが何よりも重要だと考える。 現在の地上波デジタル化計画は一旦凍結した上で、国民的議論を喚起することをあらためて呼びかけるものである。
                                                                   以 上

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「有事3法案」と「メディア規制2法案」の国会審議入りに抗議し、
廃案を求める委員長談話

                           2002年4月27日
                           日本民間放送労働組合連合会
                                中央執行委員長 碓氷 和哉

 4月26日、小泉内閣は、衆院本会議で「武力攻撃事態法案」「自衛隊法改悪案」「安全保障会議設置法改悪案」、いわゆる「有事3法案」の審議を開始した。これら3法案は、国会の意志や憲法の規定を超越して「有事事態」を判定し、国民に協力を強制する権限を内閣総理大臣に与えるものであり、「憲法の保障する国民の自由と権利」に制限を加える法案である。それは、先の国会で強行された「テロ対策特措法」などとあいまって、現実にアメリカが引き起こしている戦争に、日本の国民と国土を強制的に引き込み、世界平和の実現という日本国憲法の掲げる理想に真っ向から敵対するものに他ならない。

 小泉内閣はこれに先立つ24、25両日、参院本会議で「人権擁護法案」を、衆議院本会議では「個人情報保護法案」の「メディア規制2法案」の審議入りを強行した。これら2法案は、民主主義の根幹をなす国民の「知る権利」や言論・表現・内心の自由に政府・行政が介入する道を開くものである。

 一連の法案には、すでに多くの国民が強い危惧と反対の声をあげ、与党関係者の中にさえ見直しをもとめる声がある。しかし、小泉首相は、これらの声に耳を貸さず、靖国神社への公式参拝を改めて強行したうえで、これら法案の審議を開始した。
 「有事法制」と「メディア規制法」は相互に重なり合い、国民主権と国家主権、恒久平和、基本的人権、議会制民主主義、地方自治など「日本国憲法の基本原則」のすべてを蹂躙し、政府・行政による不当な支配・介入に道を開くものであることは明らかである。

 民放労連は、戦後民主主義に対する全面的な攻撃ともいうべき「有事3法案」と「メディア規制2法案」がいっせいに審議入りしたことに強く抗議し、これらの法案の廃案を求めて すべての国民と共にたたかいをすすめるものである。

以  上

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和歌山毒物カレー事件裁判における放送テープ証拠採用についての見解

                           2002年3月28日
                           日本民間放送労働組合連合会
                                中央執行委員会

和歌山地裁で開かれている和歌山毒物カレー事件の公判で、裁判所は3月22日、民放局が放送した林真須美被告らの逮捕前のインタビューを録画したビデオテープの一部を被告の「供述調書」として証拠採用することを決定した。
このテープは、捜査本部が事件直後から事件関係の番組を録画し、捜査員が編集したものと伝えられている。

 放送番組のテープが裁判の証拠とされることは、報道番組の報道目的外使用であり、こうしたことが容認されれば、取材をされる側の報道に対する信頼は著しく失われる。そもそも取材行為は,明示・黙示を問わず報道目的以外に使用しないことを前提とすることが取材の原則である。この原則が今回のように容易に覆されるならば、被取材者は取材に応じなくなり、取材・報道の自由の重大な侵害となって、国民の知る権利を奪うことにつながる。

  裁判所は、「適正な刑事裁判実現のためには、報道の自由、取材の自由が一定の制約を受ける場合がある」とし、「その制約の当否は適正な刑事裁判を実現するための必要性と、その制約により取材の自由が妨げられる程度、報道の自由に及ぼす影響の程度を比較考量して決せらるべき」としている。そもそも、「適正な刑事裁判実現」と「取材、報道の自由」の両者は秤にかけられるべきことではない。取材・報道の自由が制約を受け、真実が明らかにされにくい社会で、適正な裁判を実現することはおよそ困難であろう。
  今回のケースのように、捜査本部が最初から捜査目的に使用する前提で録画した放送素材が証拠採用されるのであれば、報道機関が捜査機関の下請け機関の役割をはたすことになりかねない。

  現在政府は、個人情報保護法案を国会に上程中であり、この法案では基本原則で報道機関にも利用目的の明確化を求めている。その一方で、公権力の側は目的外利用をやりたい放題というのは大きな矛盾であり、「官に甘く民にのみ厳しい」と批判されているこの法案の危険性がはしなくも露呈されたと言うべきでもあろう。

 これまで、放送に使用されたテープ、あるいは未放送の取材テープが裁判の証拠として採用されることについて、私たちは一貫して反対を表明してきた。にもかかわらず、捜査機関や司法機関は放送素材の証拠採用を年々エスカレートさせており、きわめて憂慮すべき事態である。放送素材のこうした捜査・法廷での使用を原則的に禁止する措置の法制化を、報道機関はこぞって強く働きかけていくべきであると考える。 今回の件についても、報道の自由や取材の自由を守る立場から、裁判所の決定に強く抗議するものである。
                                                                 以 上

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