2001年の民放労連の見解・声明

「アナログ周波数変更対策見直し」についての民放労連の見解(2001.11.29)

「テロ対策特別措置法」、自衛隊法改正案に反対する声明(2001.10.24)

「人権救済制度の在り方についての答申」に対する民放労連見解(2001.5.30)

個人情報保護法案についての民放労連見解(2001.4.3)

電波法改正案に対する民放労連の見解(2001.3.8)

自民党の「放送活性化検討委員会」についての見解(2001.2.22)

法務省・人権擁護審議会「人権救済制度のあり方に関する中間取りまとめについての意見書(2001.1.19)


2000年の民放労連声明・見解

1999年の民放労連声明・見解

1998年以前の民放労連声明・見解

   

「アナログ周波数変更対策見直し」についての民放労連の見解

2001年11月29日
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)
中央執行委員長 碓氷 和哉

 民放、NHK、総務省、各地域協議会で構成する「全国地上デジタル放送推進協議会」(以下「全国協議会」)は11月20日、「地上デジタル放送の進め方について」を発表した。  
これは地上デジタル放送を進めるにあたって、今年7月に発足した全国協議会の前身である「地上デジタル放送に関する共同検討委員会」(以下「共同検討委員会」)が2000年4月26日に発表したアナログ周波数変更対策(以下「アナアナ変更対策」)を大幅に見直すというものである。当初、共同検討委員会は、アナアナ変更対策に関して、アナログ対策局所数は418局所、影響世帯数は246万世帯、対策費用は総額で852億円になるとしていた。しかし、今回の全国協議会の発表では、対策局所数は470局所が増えて888局所、影響世帯数も190万世帯が増えて436万世帯とし、対策費用は明らかにされていないが2000億円以上に膨れ上がっていると言われている。
 共同検討委員会は、アナアナ変更対策費用の852億円全額について国に負担を求める方向を決めた。これを受けて郵政省(当時)は、その財源に電波利用料収入を充てる方針を決め、2000年8月31日に152億円を盛り込んだ2001年度の概算要求を大蔵省(当時)に提出した。その後、関東では在京キイ5社、近畿ではテレビ大阪を除く在阪テレビ4社の送信対策費を支援対象から除外し、アナアナ変更対策費用の総額を727億円とし、このうち123億余りが2001年度予算に計上された。
 今年6月8日には、アナアナ変更対策費用に電波利用料を充当するための電波法改正案を参議院本会議で可決、成立させた。この電波法改正はアナアナ変更対策に国費を投入するための条件として、アナログテレビ放送の周波数使用期限を10年以内とするもので、2011年にアナログテレビ放送が打ち切られることが、国民や視聴者にほとんど周知されないまま決められた。
 全国協議会は、今回の見直し発表について「対策実施段階に入り、各地域ごとに詳細に電波状況について測定調査を行ったところ、対策局所が増加」したことを「状況変化」としてあげ、「今後の進め方」として「九州等の西日本及び関東の一部の地域において、セット・トップ・ボックス(STB)方式を対策手法として追加する」ことをあげている。
 今回の全国協議会の発表は、地上デジタル放送を進めるうえで次のような大きな問題を含んでいる。
 第一に、共同検討委員会と全国協議会が検討してきたアナアナ変更対策がきわめて杜撰なものであったことである。全国協議会があげている有明海地域や瀬戸内海地域、さらには北関東地域は、当初から電波事情によりアナアナ変更対策に問題があることは周知の事実であった。また、本来の放送区域外の放送を視聴している対象地域外受信対策についても当初の計画ではまったく無視されていたことが明らかになった。2011年アナログテレビ放送打ち切りという電波法改正までおこなって国費投入をはかり、対策実施段階で当初計画を大幅に変更、見直すというのでは、検討内容が杜撰であったとしか言いようがなく、このようなあまりにも拙速に過ぎる手法で地上デジタル放送計画が進められることに大きな疑念と不安を抱くものである。
 第二に、アナアナ変更対策は地上デジタル放送移行に際して、アナログテレビ放送の受信を確保するためにおこなうものである。しかし、全国協議会は今後の進め方に、アナアナ変更対策として、一部の地域で地上デジタル放送を受信するSTBを給付することを新たに打ち出している。一部の受信者だけに地上デジタル放送が受信できるSTBを給付することは、受信者間に不平等を生じさせることになる。共同検討委員会も昨年4月の発表では「コスト増や社会的不公平を生む等の問題もあり、STB方式を採用することは困難」と結論付けている。また、STB給付のためには対象地域でデジタル放送が良好に受信できることが条件であるが、その制度的保障もなされていない。
 第三に、このような杜撰な地上デジタル放送計画のもとで、放送事業者が安易に巨額の国費投入を求め続けていくことは、国民の放送に対する不信を招くことになり、放送の自立・自律を損ねることにもなる。また、不透明な計画のもとで放送局も膨大な出費を強いられ、本来の放送機能が低下し視聴者サービスにも悪影響を及ぼすことになる。

 地上デジタル放送は、国民すべての利益の上にたち、国民のためのものでなければならない。しかし、政府、行政、放送事業者が推し進めている地上テレビ放送のデジタル化は、国民不在のものとなっている。アナアナ変更対策の大幅な見直しが迫られているにもかかわらず、「2003年の地上デジタル放送開始」に固執している総務省の姿勢も大きな問題である。
 民放労連は、これらの問題点を踏まえて、総務省及び地上放送事業者に対し次のことを求めるものである。
@ 地上デジタル放送計画及びアナアナ変更対策にかかわる費用や国民の負担、放送システムなど全容について徹底した情報開示を早急におこなうこと。
A 地上デジタル放送について国民・視聴者の意見を広く求める場を設けること。国民的議論を通して国民・視聴者の十分な理解を得ることなく、地上デジタル放送をすすめることがないようにすること。
B そのために、最初に地上デジタル放送のスケジュールありきの姿勢を改め、デジタル放送開始時期の見直しを図り、地上デジタル放送の是非を含めて検討をすすめ、拙速なデジタル化をやめること。                  以 上

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「テロ対策特別措置法」、自衛隊法改正案に反対する声明

2001年10月24日
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)
中央執行委員会

 「テロ対策特別措置法」が10月18日、充分な審議や国民のコンセンサスを得ることなく衆議院本会議を通過した。法案はそもそもの「テロリズム」の定義さえ明確にしないまま、武器使用の範囲を拡大し、活動地域の地理的限定も外し、基本計画に国会の承認が必要でないなど、周辺事態法をも超える、まさに「戦争をするための法律」であり断じて許されないものである。
 日本の安全保障政策の根幹にかかわる法案にもかかわらず、論議を尽くすことなく、採決を強行したことに強く抗議する。そもそもアメリカは今回の軍事活動を個別的自衛権の発動と位置付けており、日本が国連安保理のテロ非難決議を理由として対米支援に踏み込むことには正当性がない。政府は自衛隊が支援する根拠として憲法前文や98条の国際協調主義の精神をあげているが、国際貢献という言葉が先走りしているばかりで、実質はアメリカの報復戦争に協力するだけである。「アメリカにどう見られるか」という"おびえ"が安全保障を決めるというのは、日本の主権さえも放棄した暴挙と言わざるを得ない。政府もこれまで集団的自衛権の発動は認めておらず、自衛隊の派遣が憲法9条に違反することは明白である。日本に求められているのは、軍事活動による国際貢献ではなく、武力行使を禁じた憲法の精神に基づき、国際法にのっとった解決を目指すことや難民支援、カンボジア和平などで発揮した中立的な立場での平和的な紛争解決に尽力することではないだろうか。
 
 また自衛隊法改正案は、かつて廃案になった「国家秘密法」案の流れを受け継いだ広範な「防衛秘密」が新設され、しかも、その秘密は防衛庁長官が「防衛上特に秘匿することが必要」なものを指定するという、極めて国にとって都合よく作られたものである。適用対象者も自衛隊員だけではなく、国家公務員や民間人まで拡大され、重罰化された。「教唆」の罰則も強化され、ジャーナリストも対象に含まれかねないことから、取材や報道活動にも支障をきたし、国民の知る権利をおびやかすことになりかねない。自衛隊の独走を防ぐチェック機能も弱体化する可能性がある。テロ対策という名のもとにドサクサ紛れの法案改正と言われても仕方がなく、報道に携わるものとして到底容認できない。
 
 法案がこのように短期間に成立した背景には、メディアの報道姿勢にも一定の責任があることを忘れてはならない。放送メディアは、アメリカから洪水のようにあふれる映像を多用して無批判に番組を構成した結果、ナショナリズムを煽り、米国に追従することが国際貢献という誤解を招き、法案の危険性を訴えることが足りなかったのではないだろうか。
かつて、ガイドライン関連法や組織犯罪対策三法案が十分な論議もないままに採決された。「テロ対策特別措置法」や自衛隊法の改正でこうしたことが繰り返されれば、日本は「戦争のできる国」へとまっしぐらに突き進むことになろう。参議院では審議を尽くして、両法案を廃案にすることを強く要求する。
                                                                         以  上

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「人権救済制度の在り方についての答申」に対する民放労連見解

2001年5月30日
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)
中央執行委員会

 強制調査権を持つ独立した人権救済機関の設置など人権救済制度の整備を検討してきた人権擁護推進審議会は答申をまとめ、5月25日に森山真弓法相に提出した。答申では、人権救済の対象とするのは、@差別、A虐待、B公権力による人権侵害、Cメディアによる人権侵害、の四類型となっていて、メディアも対象としている。
 差別や虐待、公権力による人権侵害について、救済制度の在り方を含めた検討が強く求められていることは言うまでもない。しかし、答申は、肝心の「公権力による人権侵害」への対応が不十分であるだけでなく、人権の普及と人権救済に果たしてきたメディアの役割を全く無視し、「メディアによる人権侵害」を公権力によるそれと同列にとりあげて人権機関の調査、勧告などの対象とするなど、とうてい容認できないものとなっている。表現の自由、報道の自由は、民主主義社会においては人々の知る権利を保障する必要不可欠なものであり、それを阻害する人権救済機関の設置にはつよく反対するものである。
 答申は、メディアの人権機関による救済として、「犯罪被害者とその家族、被疑者・被告人家族、少年の被疑者・被告人等の報道に関するプライバシー侵害や過剰な取材等については、調停、仲裁、勧告、公表、訴訟援助の手法により、積極的救済を図るべきである」とし、メディアを積極的救済の対象にしている。ここで言う「過剰取材」については、定義がはっきりせず、判断が行政機関に委ねられている以上、運用次第では表現の自由、報道の自由に対して歯止めがきかなくなる危険がある。
 一方、答申は調査手続・権限の整備について、メディアによる人権侵害は「任意的な調査によって対処すべきもの」とし、人権救済制度としては「調査への協力を真摯に求め、調査過程の公表などを通じて、事実関係の解明や被害者の救済を図るべきである」としている。これは「任意調査」であっても、「人権救済」の名のもとに公権力がメディアに介入し、メディアの表現の自由を脅かすものであり、取材活動などに事実上の介入をするおそれがある。
 また答申は、メディアに対して「報道や取材の過程において人権侵害を未然に防ぐ取り組みを強化するとともに、実効的な苦情処理体制を整備するなど自主的な対応が図られるべきである」と、自主的対応の強化・徹底を求めている。メディアによる人権侵害は、あくまでもBROなどの自主・自律の第三者機関によって救済されるべきであり、その活動を強化してメディアの自律を促すべきである。
 「メディアによる人権侵害」に加えて、「差別」の類型では「差別表現」が極めて大きな比重を占めているが、「差別表現」もまた表現の自由、報道の自由に深くかかわる問題を内包しており、「差別を助長・誘発する表現」「集団的誹謗表現」を容易に判断できるものではない。強制調査権のある人権機関が「差別表現」を対象とし、その是非を判断すること自体、表現者やメディア関係者にとっては脅威であり、差別と向き合うことをこれまで以上に避ける傾向がメディア全体に広がることが予測される。答申では、「憲法の保障する表現の自由に配慮し適切に対応すべき」と記しているが、表現にかかわる問題は慎重な扱いが必要であるのは言うまでもなく、『部落地名総監』だけを例示して「差別表現」全般に網をかけて表現行為を排除していくような対応にはつよく反対する。
 このように強制調査権をもつ人権機関がメディアを救済対象とすることは、表現の自由、報道の自由を侵害し、国民の知る権利を奪うことにつながるもので、憲法上重大な問題がある。一方、公権力による人権侵害については、「不服申し立て制度が完備している」ことを理由に、「人権擁護上看過し得ないもの」に限って救済していくべきだ、と消極的な姿勢をとっている。人権救済制度の整備は、もともと国連の人権諸機関から公権力による人権侵害の救済について厳しい批判を受けたため検討されてきたが、答申は「メディアによる人権侵害」や「差別表現」を救済対象にするなど、問題をすりかえていると言わざるをえない。私たちは、公権力によるすべての人権侵害を詳しく調査し、何よりもそれらを救済する人権機関の構築を目指すことをつよく求める。
 私たちは、人権救済制度でメディアを救済対象とすることは、公権力のメディアへの介入につながるものであり、メディアを対象から除外しメディアによる人権侵害については、市民参加による自主・自律の救済制度の確立を促し、その拡充を図るよう重ねて求めるものである。
                                                                         以 上

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個人情報保護法案についての民放労連見解

2001年4月3日
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)
中央執行委員会

 政府は3月27日、「個人情報の保護に関する法律案」を閣議決定し、国会に提出した。法案は、民間事業者に課す義務規定の報道分野への適用を除外する一方、個人情報保護の規範となる「基本原則」を報道分野にも適用することが明記されている。「基本原則」は、利用目的による制限、適正な情報の取得、正確性の確保、安全性の確保、透明性の確保の5項目であり、法律が施行された場合、記者に対する情報提供がなくなるなど取材・報道活動に大きな支障をきたす恐れがある。
法案は、一定規模の個人情報を扱う民間事業者に対し、保有する個人情報について本人からの開示や訂正の求めに応じることや、安全管理措置を講じるなどの義務規定を設けている。この義務に違反し、主務大臣(総務大臣)の勧告・命令に違反した事業者に対しては6ヶ月以下の懲役または罰金30万円以下の罰則規定が設けられた。
第6章の雑則に設けられた適用除外規定では、「放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関で、報道の用に供する目的」の場合、学術、宗教、政治と同様に、民間事業者に課す義務規定を適用しないこととしているが、4分野に関しては、個人情報の安全管理や苦情処理の措置を講じ、その内容を公表する努力を求めている。
義務規定の適用除外で問題となるのは、「報道の用に供する」の「報道の用」の概念が曖昧なことである。放送の場合、ワイドショー番組やいわゆる娯楽番組は義務規定から明確には除外されてはいない。また、出版についても除外の対象にはなっておらず、「報道」とは見なされない雑誌やフリーのジャーナリストによる取材・報道には義務規定が適用される可能性がある。
 法案は多くの問題点を含んでおり、国民の知る権利を奪い、憲法に保障された言論・出版の自由を侵害し、報道や番組制作の現場に萎縮をもたらすことになるとして言論報道界は法案の再検討を要求している。放送局をはじめ「表現の自由」に関わるすべての活動が、この法律の適用から除外されるよう強く求める。
                                                                         以 上

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電波法改正案に対する民放労連の見解

2001年3月8日
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)

 政府は2月9日、2011年に現行のアナログ放送を打ち切り、地上テレビ放送もすべてデジタルに切り替えることを盛り込んだ電波法の改正案を国会に提出した。現行のアナログ対応受信機ではテレビが全く見られなくなる視聴者不在のこの強引な政府の電波政策に、私たちは大きな疑問を感じざるを得ない。
 デジタルテレビ放送用のチャンネルを確保するためには、現行のアナログ放送の一部のチャンネルを他のアナログチャンネルに移行すること(アナアナ変換)がまず必要であることから、改正案では、そのための放送局の送信設備や視聴者のアンテナ工事に要する費用を「電波利用料」を財源として国が支出できるとしている。しかし、この財政支出の条件として、アナログ放送の周波数使用期限を「デジタルテレビ放送のチャンネルプラン公示後、最大10年間」としている。今年の夏にチャンネルプランが示されれば、現行のアナログ放送は2011年には終了することになる。これにあわせて、放送事業者には「デジタル放送を5年以内(2006年まで)に開始すること」が求められており、放送事業者にはデジタル放送設備の構築が、視聴者にはデジタル対応テレビかアダプターの購入が待ったなしで強いられることになる。
 98年10月に出された郵政省(当時)の「地上デジタル放送懇談会」の報告書では、アナログ放送の終了目標を2010年としていたが、その目標を見直す条件として、@当該放送対象地域のデジタル対応受信機(アダプター、ケーブルテレビ等による視聴を含む)の世帯普及率が85%以上であること、A現行のアナログ放送と同一放送対象地域をデジタル放送で原則100%カバーしていること-の2点を挙げていた。この時も民放労連は「放送業界は、放送法に規定されている『あまねく放送の義務』に従って難視聴地域の解消に努めてきました。それが、85%の普及率で『持てる者』と『持たざる者』を線引きするということになれば、これまでの放送行政のあり方と大きな矛盾をきたすのではないでしょうか」と指摘し、アナログ放送打ち切りには余裕を持ったスケジュールが必要であると主張してきた。今回の改正案は、二つの条件をも投げ棄てての強行となっている。
 2月22日に開かれた衆議院総務委員会で、総務省の小坂憲次副大臣は、「その後の諸外国の急速なデジタル化の動向があり、明確な終了時期を決めて政策的に誘導することにした」とその理由を述べているが、従来の方針をも捻じ曲げる暴挙と言わざるを得ない。
 民放連が行ったアンケートによると、現行の放送エリアをデジタル化するのに要する期間について「5年以内で可能」とした局はわずか12%にとどまっており、「6年から10年」とする局が50%となっている。2011年にアナログ放送を打ち切るとなれば、その段階でデジタル化が完了していない地域ではテレビを見られない状況になり、視聴者の不利益は計り知れない。一方でBSデジタル放送対応テレビが約30万円、チューナーでも約10万円という価格を考えると、視聴者はテレビを見るためにかなり高額の負担を強いられることになる。また、放送局が短期間にデジタル化への投資を行えば、そのしわ寄せが番組制作費に及ぶことも懸念される。
 今やテレビ受像機は一家に一台ではなく、一人に一台の時代を迎えている。人々の生活に大きな影響をもたらすテレビ放送のデジタル化については、その計画の全体像を早期に明らかにした上で、社会的論議が必要であることはいうまでもない。法案審議においても公聴会を開催するなどして、広く視聴者・市民の意見を聞き、十分に議論をつくすべきである。
 私たちはすべての視聴者がデジタル放送受信に無理なく移行できるように、アナログ放送打ち切りの期限の見直しを求めるとともに、視聴者(とりわけ年金生活者等の弱者)に対しては具体的な支援策を打ち出すことを強く求めるものである。
                                                                       以   上

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自民党の「放送活性化検討委員会」についての見解

2001年2月22日
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)

 自民党は7日、「放送活性化検討委員会」を設置し、第1回委員会を開催した。「検討委員会」委員長名で出された文書によれば、この委員会は古賀誠幹事長の命によって設置され、委員長には熊代昭彦氏、副委員長には元NHK記者の浅野勝人氏ら13人が就任、委員は自民党国会議員としている。また、検討課題として「放送の公平中立はどうしたら守れるか、放送される見解の多様性はどうしたら確保されるか、放送の規制改革をどう進めるか、多チャンネル時代の放送・放送行政のあり方」などを上げている 
 第1回検討委員会に関する報道によれば、熊代委員長は「放送法は政治的に公平であるよう定められているが、それは守られていない」「多チャンネル時代を迎え、これを削除して『自民寄り』『民主寄り』等と標榜してもらって自由にやるという考え方もある。1年ぐらいかけて前向きに議論したい」と述べ、委員からは「放送法に違反しているとみた場合は、放送局を積極的に提訴する」などの意見が出たとされている。
 政党が放送についてどのような見解を持とうと自由であるが、この委員会は政権を担う与党の中心勢力である自民党による「放送介入委員会」の色彩が濃く、看過できないものである。
 自民党によるメディア批判は、98年の参議院選挙での「敗北」以降急速に強まっている。98年10月には2000人の党員による「報道モニター制度」を設置、99年8月には自民党「報道と人権等のあり方に関する検討会」が「報告書」を発表し、「国民参加によるチェックシステムの確立」「司法による救済」「法的根拠のある第三者機関の設置」などを提起している。一連の動きは、法案として今国会に上程されようとしている「青少年社会環境対策基本法」や「個人情報保護基本法」のメディア規制条項につながるものである。
KSD汚職や外務省機密費横領に見られる政治の腐敗や、森首相の度重なる「失態」「失言」による内閣支持率の低下などの原因を、ことさらメディアの報道に求め、国民の目や耳を真実から遠ざけようとしているのが、今の自民党の姿勢である。とりわけ、事実を国民の前にさらすテレビ報道に対しては「総攻撃」の様相さえある。
 いうまでもなくメディアは権力監視の機能を持たなければならない。メディアが権力の不正や腐敗を告発し、国民が政治的な判断をする場合の材料を提供することは当然である。
 今回設置された自民党「放送活性化検討委員会」は、こうしたメディアとしての放送の役割を否定するものであり、「政治的公平」の削除など放送法の基本理念を変えることや、「放送法違反は提訴」を打ち出すことによって、放送局と放送報道現場をけん制し、萎縮効果を狙ったものであることは明らかである。
 私たちは、自民党「放送活性化検討委員会」の解散を求めるとともに、参議院選挙を前にした今、放送に携わるものがこうした政権党の干渉や介入にひるむことなく、多くの国民の支持のもとに、真実を伝えるためのメディアの担い手として奮闘することを呼びかける。                                           
                                                                         以  上

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人権擁護審議会「人権救済制度の在り方に関する中間取りまとめ」
に対する意見書

メディアには自主・自律の救済制度を求め、
公権力にはもっと厳しい目を

2001年1月19日
日本民間放送労働組合連合会(民放労連)

 〔意見の要旨〕
 差別や虐待、公権力による人権侵害について、救済制度の在り方を含めた検討が強く求められていることは言うまでもない。しかし、「中間取りまとめ」は、肝心の「公権力による人権侵害」への対応が不十分であるだけてなく、人権の普及と人権救済に果たしてきたメディアの役割を全く無視し、「メディアによる人権侵害」を公権力によるそれと同列にとりあげて人権機関の強制調査、勧告などの検討対象とするなど、とうてい容認できないい内容を含んでいる。表現の自由、報道の自由は、民主主義社会においては人々の知る権利を代行する必要不可欠なものであり、それを阻害する人権救済機関の設置には強く反対する。

[1]メディアによる人権侵害の救済は自主・自立の制度で
 「中間取りまとめ」では、「メディアによる人権侵害」が「差別」「虐待」「公権力による人権侵害」と同列に、四つの類型の一つとして取りあげられているが、これに添付された「諸外国の国内人権機関一覧」をみても、メディアの表現・報道活動をその国の人権機関が救済の対象としている国は一つもない。権力を監視する報道の役割を考えればこれは当然のことで、健全な民主主義社会を維持していくうえで、政府・権力からのメディアの独立がいかに必要不可欠であるかを示しているといえる。
 すでに日本でも、放送界は「放送と人権等権利に関する委員会機構」を自主的に設立して第三者機関による報道被害の救済にあたっており、新聞界でも自主・自律の救済システムの検討と実践が各地で始まっている。メディアによる人権侵害については、こうした市民参加による自主・自律の救済制度の確立を強く促し、その拡充を図ることをまず第一に検討すべきである。

[2]なぜ「差別表現」をここまで強調するのか
 「メディアによる人権侵害」に加えて、「差別」の類型では「差別表現」が極めて大きな比重を占めている。その扱いは「公権力による人権侵害」に匹敵する(ともに24行)記述となっているが、「差別表現」もまた表現の自由、報道の自由に深くかかわる問題を内包しており、「差別を助長・誘発する表現」「集団的誹謗表現」と容易に判断できるものではない。「中間取りまとめ」では『部落地名総監』だけを差別表現として例示しているが、これはむしろ例外中の例外書籍であって、メディアの現場では、差別の意図を持たない表現がしばしば問題にされ、木を見て森を見ない議論の中で「ことば狩り」の標的にされてきた苦い経緯がある。
 それだけに、強制調査権をもつ人権機関がこうした「差別表現」を対象とし、その是非を判断すること自体、表現者やメディア関係者にとっては脅威であり、差別と向き合うことをこれまで以上に避ける傾向がメディア全体に広がることが予測される。表現にかかわる問題は慎重な扱いが必要であり、『部落地名総監』だけを例示して「差別表現」全般に網をかけるような乱暴極まりない対応には強く反対する。

[3]何よりも「公権力による人権侵害」の救済を
 国連規約人権委員会が1998年に、日本政府に対して国内人権機関の設置を求めた最大の理由は、公権力による人権侵害の救済にあった。規約人権委員会の勧告の内容の大半が公権力による人権侵害であることをみれば、そのことは明白である。
 にもかかわらず「中間取りまとめ」は、現行の行政不服審査システムや内部監査・監察システム、苦情処理システムに一定の理解を示し、「公権力による人権侵害すべてを積極的救済の対象とすることは相当ではない」としている。「中間取りまとめ」のこうした姿勢は、「メディアによる人権侵害」や「差別表現」へのそれとは対照をなすものであり、「とりわけ、警察及び出入国管理当局による不適正な処遇について調査及び救済申立てができる独立した機関等」の設置を求めた国際的な勧告のすりかえにほかならない。
 私たちは、公権力によるすべての人権侵害を詳しく調査し、何よりもそれらを救済する人権機関の構築を目指すことを強く求める。
 

                                                                         以  上

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