民放労連第128回臨時大会「民主主義の基盤となる放送の価値を守り抜く決議」(2019年1月27日)

 放送番組基準は「政治に関しては公正な立場を守り、一党一派に偏らないように注意する」「広告は、真実を伝え、視聴者に利益をもたらすものでなければならない」「番組およびスポットの提供については、公正な自由競争に反する独占的利用を認めない」「事実を誇張して視聴者に過大評価させるものは取り扱わない」「広告は、たとえ事実であっても、他をひぼうし、または排斥、中傷してはならない」と規定している。
 安倍晋三首相が目指す改憲を国会が発議し、国民投票が実施されるにあたって、放送局がこうした基準をしっかり守る姿勢を示すことができれば、憂慮される事態―改憲勢力がカネの力で大量の意見表明CMを放送して、世論を改憲賛成に誘導するのではないかーに対し、有権者に有用な放送が実現できると信じる。

 2007年に成立した国民投票法は、国民投票運動を「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」と定義している。そのうえで、主権者である国民一人ひとりが冷静な判断を行うために、国民投票運動CMは、投票期日前14日から投票日当日まで、放送を禁じられている。
 日本民間放送連盟(民放連)は、テレビ・ラジオでの「憲法改正に賛成です・反対です」との意見を表明する有料意見CMについても、投票期日前14日間は取り扱わないとの可能性を示唆している。
 憲法「改正」をめぐる今日の問題は、日本の民主主義の行く末に大きな影響を与えるだろう。各放送局は、有料意見CMの取り扱いについては国民の冷静な判断に資する自主基準を定め、日常の報道番組などにおいても積極的に改憲の問題を取り上げ、多様性多元性を確保して、さまざまな意見をできる限り紹介することが求められる。

 自民党は昨年12月、「総務省は、ローカル局の積極的な再編を促進するため、放送対象地域の拡大= 県域免許の見直しについて検討を行うこと」などを項目とする「放送法の改正に関する小委員会第二次提言」を打ち出した。放送局の経営効率化を狙ったこれまでの政策の延長線上にあるものと言えるが、地域が必要とする情報を確実に届けていくというローカル放送の役割が阻害されるのではないだろうか。

 昨年末に金沢市内で開催されたメディア総合研究所主催のシンポジウム「ローカル放送の未来を問う」では、地元の放送局から招いたパネリストが地域におけるジャーナリズムの確立のために奮闘している実状を語った。地域メディアとしてのローカル放送局はむしろ多発する災害等の放送即応対応など、地域密着型の必要性が高まっており、「積極的な再編」などで整理統合されるような存在では決してない。

 放送は戦後を通して、日本の民主主義の基盤を形成してきたとの自負がある。今こそ、放送・表現の自由を最大限に生かして、視聴者から信頼される放送を確立しよう。権力からの不当な圧力をはねのけて、放送の価値を守り抜こう。
 右、決議する。


2019年1月27日
日本民間放送労働組合連合会 第128回臨時大会